ヘモグロビンとフェリチンの回復の違いを説明する鉄欠乏性貧血のイラスト

「貧血の数値はよくなったのに、まだ鉄剤を飲む必要があるの?」

鉄欠乏性貧血の治療をしている方から、よくいただく質問です。

血液検査で貧血をみるとき、多くの方が気にされるのがヘモグロビン(Hb)です。しかし、鉄欠乏性貧血ではヘモグロビンだけでなく、フェリチンも同じくらい重要です。ヘモグロビンが正常になっていても、体内に蓄えられている鉄が十分に回復していないことがあるためです。

今回は、血液内科の視点から「ヘモグロビン」と「フェリチン」の違いや、治療継続の大切さについて解説します。

ヘモグロビンとフェリチンは何が違う?

ヘモグロビンは、赤血球の中にあり、酸素を全身へ運ぶ役割をしています。鉄が不足するとヘモグロビンを十分につくれなくなり、鉄欠乏性貧血になります。

一方、フェリチンは体内に鉄を蓄えるタンパク質です。例えるなら、

・ヘモグロビン=今使っている鉄(お財布の中のお金)
・フェリチン=体に蓄えている鉄の貯金(銀行の貯金)

と考えると分かりやすいでしょう。

鉄欠乏が進むと、まず体内に蓄えていた鉄(フェリチン)が減少し、その後ヘモグロビンが低下して貧血の症状が現れます。そのため、鉄欠乏の程度を正しく評価するには、ヘモグロビンだけでなくフェリチンの検査も欠かせません。

ヘモグロビンが改善してもフェリチンはまだ低いことがある

鉄剤による治療を始めると、ヘモグロビンは徐々に改善していきます。すると、「血液検査が正常になったから、もう鉄剤をやめてもいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、ヘモグロビンが正常化した時点では、体内の貯蔵鉄(フェリチン)が十分に回復していないケースが多々あります。

国内の鉄欠乏性貧血の治療指針でも、貧血が改善した後、貯蔵鉄であるフェリチンが正常化するまでさらに数か月間鉄剤を継続することが示されています。つまり、「ヘモグロビンの回復 = 治療終了」とは限らないのです。

フェリチンが低いまま鉄剤をやめるとどうなる?

ヘモグロビンだけをみて鉄剤を中止すると、体内の鉄の貯金がない(フェリチンが低い)状態のままになってしまいます。

特に次のような背景がある場合、再びすぐに鉄欠乏へ逆戻りしてしまいます。

・月経量が多い(過多月経)
・妊娠や授乳などで鉄の必要量が増えている
・食事からの鉄摂取量が少ない
・消化管から慢性的な出血がある

そのため、「貧血が改善したか」だけでなく、フェリチンを含めて体内の鉄トータルの状態を確認することが重要です。

鉄欠乏の原因を調べることも大切です

鉄剤を飲んでヘモグロビンが改善しても、もともと鉄が不足した原因が解消されていなければ、薬をやめた後に再発を繰り返してしまいます。

女性であれば過多月経が隠れていることがあり、男性や閉経後の女性では消化管出血(胃潰瘍やポリープ、大腸疾患など)の精査が必要になるケースもあります。

「鉄剤を飲むと良くなるけれど、やめるとまた貧血になる」という場合は、ただ鉄を補うだけでなく、なぜ鉄が不足しているのかその根本原因を調べることが何よりも大切です。

鉄剤の副作用がつらいときは?

鉄欠乏性貧血では、一般的に経口鉄剤による治療が行われますが、人によっては次のような消化器症状が現れることがあります。

・吐き気や胃の不快感
・腹痛
・便秘、下痢

「鉄剤を飲むと胃が気持ち悪くなる」「便秘がつらくて続けられない」と悩む方も少なくありません。しかし、副作用がつらい場合でも、鉄剤の種類や服用方法を変更することで治療を続けやすくなることがあります。

当院ではリオナ錠も選択肢の一つです

けやき内科小児科 花小金井駅前では、鉄欠乏性貧血の治療薬の一つとしてリオナ錠(一般名:クエン酸第二鉄水和物)も取り扱っています。

リオナはもともと慢性腎臓病の高リン血症治療薬として使われてきたお薬ですが、現在は鉄欠乏性貧血にも適応を持っています。従来の鉄剤で胃腸症状が気になった方などに対し、患者さんの状態や経過に合わせて治療選択肢の一つとして検討します。

ただし、リオナにも便秘などの消化器症状や、鉄過剰への注意が必要となる場合があります。お薬ごとの特徴がありますので、症状や検査値、これまでの治療歴に合わせて慎重に選択します。当院では院内処方に対応しているため、診察後にお薬をその場でお渡しすることが可能です。

「貧血が治らない」「鉄剤が飲みにくい」ときはご相談ください

鉄欠乏性貧血はよくみられる病気ですが、

といったお悩みがある場合は、治療方針や原因をあらためて見直す必要があります。

貧血や鉄不足について気になることがありましたら、けやき内科小児科へどうぞお気軽にご相談ください。

【参考文献】

Snook J, et al. British Society of Gastroenterology guidelines for the management of iron deficiency anaemia in adults. Gut. 2021;70:2030-2051.
岡田 定.鉄欠乏性貧血の治療指針. 日本内科学会雑誌.2010;99:1220-1225.
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA).リオナ錠250mg 添付文書.